007 ノー・タイム・トゥ・ダイ

2021年公開の007シリーズ第25作。

ダニエル・クレイグ主演の最終作。

007シリーズって、人気シリーズであると同時に駄作の宝庫でもあるんだけど、それでも踏み外さない一線ってあった。
でも本作は、見事にやらかしてくれた。

以下ネタバレありだが、公開から一月半もたったし、もう良いだろう。

まず、「007」のコードネームをジェームズ・ボンド以外に名乗らせたことが、ボンドファンとして非常に腹立たしい。
半分ジョークと言えなくもないから許しても良いとは思うけど、その新007が全く活躍しない。
見どころは、人種差別主義者を殺したシーンくらい。
ポリコレに配慮してか黒人の女性。

まあ、ポリコレ配慮は良いんだけど、既存の人物の人種が変わるのはNGでお願いしたいよ。マネーペーニーとかフェリックス・ライターとか。

「細かいことは気にするな!」ってのはこのシリーズの鉄則なので、ストーリーの矛盾とかについては余るうるさいことは言わんが、お約束が守れないのは違うと思うよ。

従来のこのシリーズの魅力は、強い男がもっと強いとんでもない悪党に苦しめられながらも勝ち、世界を救って、いい服着て、いい車乗って、いい酒飲んで、いい女を抱くってところでしょ?

「一人の女を、一人の男が愛して」なんて、「女王陛下の007」だけで充分なんだよ。

古いボンド像ってのは現代では受け入れられないってことで、ピアース・ブロスナンにしてもダニエル・クレイグにしても、現代にウケる形に変貌させようとしてきたと言うのは、理解できる。

でも「世界を救って、いい服着て、いい車乗って、いい酒飲んで、いい女を抱く」って部分は、ブロスナン・ボンドでも変えなかったところだよ。

今回は、悪役も小物だよね。
その動機も個人的なもので、悪事のスケールのでかさの割には小さいし。
もっとも、リアリティーを求められる現代で、オーリック・ゴールドフィンガーという誇大妄想狂やその配下のオッド・ジョブみたいなマンガみたいなのは受け入れられるはずもないのだが。
日系人監督の指示なのか知らんが、「禅」っぽい悪の組織の首領の部屋の偽物感は、それはそれで初期のシリーズっぽいので面白いが。

CIAのフェリックス・ライターは死んじゃうし、よりによってブロフェルドもあっさり死んじゃうし、挙げ句の果てに最後にジェームズ・ボンドも死んでしまう。
で、エンドロールの最後にいつも通り「JAMES BOND WILL RETURN.」だって。バカにしているとしか思えない。

実は途中で催してきて我慢できなくなった。
同じ列には僕の右側にも左側にも人が一人座っている。
「邪魔しちゃ悪いよな」と思っていたら、幸いにも右の女性がトイレで中座!
僕も、速攻でトイレへ。
生まれて初めて映画館で映画の途中にトイレに行った。
短い時間とは言え、テンポの速い映画だとストーリーの展開が分からなくなりそうだが、今回は冗長すぎてそんなこともなく。
まあ、とにかく長い。上映時間163分だよ。
広告も長いから実質180分くらい。
催してきた時チラッと時計をみたら、100分以上経過。でもまだ70分以上あって。。。
普通の長さだったら我慢できただろうな。

まあ、ダメな点はいくらでも上げられるけど、この程度にしておこうか。

キューバのシーンはとても良かった。
アナ・デ・アルマス演じる3週間訓練を受けただけの新人諜報員は、いざとなったら新人とは思えない能力を発揮する美女で、いかにもボンドガールな感じ。
ピアース・ブロスナンのシリーズだったら、ベッドシーンはあっただろうな。

オープニングタイトルも良かったと思う。
ブロスナン・ボンド以降、CGが使われるようになっている。CG初期ははっきり言って駄作だが、ダニエル・クレイグ以降はCGの特性を取り込んだ出来になってきている。
ダニエル・クレイグの集大成と言うこともあり、それを感じさせる作りになっていた。

音楽も良かった。
メインタイトルはビリー・アイリッシュによるもの。残念なのは彼女がイギリス出身でないことくらい。ルーツはスコットランドとアイルランドにあるらしいが。
音楽担当は大御所ハンス・ジマーだけあって外さない。
劇中、どこかで聴いたような音楽がちらほら。
極めつけは「愛はすべてを越えて」(”We Have All the Time in the World”)がそこかしこで使われ、エンディングではアームストロング自身が歌うものが流れる。映画の内容からしても、完全に「女王陛下の007」へのオマージュなんだよな。
こういう音楽の使い方はさすがというか、えげつないというか。
そういえば、前作でも「女王陛下の007」のメインテーマが作中に使われていたよなぁ。

本作は前作までにばら撒かれた伏線を回収する内容だったんだけど、ボンドは子供を作るわ、メインキャラのフェリックス・ライターは死ぬわ、挙げ句の果てにボンドは死ぬわで新たな火種をばら撒いた。
しかも、ボンドは触るものが皆死んでしまう細菌兵器に感染していて、体内から除去できないという設定。
新しいボンド・シリーズはこれをどうするのか。。。

ダニエル・クレイグのリブートによる新しいボンド像というのはとても評価してきたけれど、最後の最後がこれとは。。。
☆★★★★
それでも円盤は買うけど。

ボンドが死ぬのはこれで二度目なので、次回作の題名は「007は三度死ぬ」かな?
そんな題名のパロディもあったな。

画像引用元 映画.com

mugakudouji
007映画・音楽・TV評価付記事

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