ツイスター
Melody Kramer
for National Geographic News
June 3, 2013ストーム・チェイサー(竜巻追跡人)として世界的に知られるティム・サマラス(Tim Samaras)氏が5月31日、アメリカ、オクラホマ州エルリーノなどで発生した竜巻で死亡した。同氏の兄弟が声明を発表。子息のポール・サマラス氏も犠牲となった。 ティム氏の兄弟ジム・サマラス氏は、「残念ながら亡くなったが、彼らは自分たちの仕事を愛していた」とフェイスブックに書き込み、同僚のカール・ヤング(Carl Young)氏も帰らぬ人となったと明かした。「きっと今頃、”天国の大きな竜巻”から地上を見下ろしているよ」。
55歳で生涯を閉じたティム・サマラス氏は過去20年間、アメリカの大平原に縦横無尽の足跡を残している。竜巻の発達地点を予測、自ら設計した観測機器を竜巻の進路に置いて、渦の内部からデータを測定するためだ。
「データは竜巻の力学や形成過程の解明に役立つ。パズルのピースを組み合わせれば、予測の精度を向上させ、事前に警報を出すこともできる」と、同氏は生前、ナショナルジオグラフィックに語っていた。
6台の高解像度カメラを放射状に配置する設計で、初めて竜巻内部の映像を360度で記録。1秒間100万コマの超高速度カメラも手がけ、数多くの落雷も撮影した。
サマラス氏が竜巻に興味を持ったきっかけは、映画『オズの魔法使』。当時6歳だった。過去20年間、世界で最も竜巻の発生頻度が高いアメリカ中部のトルネード・アレイ(竜巻の通り道)が彼のフィールドで、5?6月は移動を続けながら追跡に文字通り命を賭けた。
内部観測用の機器は、映像のみならず気圧も測定できる。しかし、10回の暴風のうち竜巻に発達するケースは2回程度に限られ、根気のいる仕事だった。
それでも、あたりもタイミングもドンピシャだったときは、情報を惜しまず研究者に提供、竜巻の形成過程や時期の分析に大いに役立っている。
「リアルタイムで記録されているので、大変重要なデータだ。特に、直径10メートル以上の竜巻は、家や車、人間が巻き込まれるような災害に直結するからだ」とサマラス氏は話していた。
2003年、サマラス氏は、サウスダコタ州マンチェスター付近の静かな道路で発生したF4級(風速93?116メートル)の竜巻を追跡。竜巻の経路に3台の観測機器を配し、最後の1台を置いて車に戻ったときには竜巻が90メートル手前まで迫っていたという。
「竜巻に一番近づいた瞬間だった。もう二度とごめんだ」と同氏は回想した。「ジェットエンジンから吹き出す滝のような轟音が辺り一帯に鳴り響く。あらゆる破片が頭上を舞い飛び、折れた電柱が300メートルほど飛ばされ、道路は舗装が剥がされる。マンチェスターの町は文字通り、雲に吸い込まれてしまった」。
「データをコンピューターにダウンロードすると、竜巻の中心で100ヘクトパスカルも気圧が下がっている」。サマラス氏は、一番忘れられない経験だったと振り返る。「こんな気圧低下は前代未聞だ。エレベーターが10秒間で300メートル上昇するに等しい」。
サマラス氏はそのフィールドワークに対して、ナショナル ジオグラフィック協会から18件の助成金を受けている。
同協会の副理事長テリー・ガルシア(Terry Garcia)氏は6月2日、次のようなコメントを発表した。「ティムは勇敢で優秀な科学者だった。竜巻と落雷という気象現象を解明しようと、危険を顧みず現地調査に立ち向かった。彼らの仕事を当たり前のように思いがちだが、ティムのように日常的に危険を引き受けてくれる人たちが存在するから、われわれは安心して生活できるのだ」。
Photograph by Carsten Peter, National Geographic
15年くらい前に見た「ツイスター」という映画を思い出した。
この映画を見るまではストーム・チェイサーというのはもちろん、竜巻の被害があんなにすごい物だなんて知らなかった。
この映画を見たのは、別に竜巻に興味があったわけじゃなくて、ヤン・デ・ボン監督の前作「スピード」が面白かったから。
今となってはストーリーは全く覚えていないけど、「ストーム・チェイサー」という命知らずではあるけれどまじめな研究者がいるということだけは覚えていた。
どうでも良い映画だが、そう言う意味では有意義だったのかもしれない。
記事の最後にある「ティムのように日常的に危険を引き受けてくれる人たちが存在するから、われわれは安心して生活できるのだ」という言葉は重い。
日本でも近年竜巻が増えている。また21世紀後半には倍増するという予測もある。
こういった人の犠牲があって、予測の精度が向上していくのだ。