無意味草子 第二期 その5

絵日記
 ある時、ある所に、絵日記の宿題を出された小学生がいた。彼は芸術家肌で、相当にうまい絵がかけたが、絵日記はついに完成しなかった。一枚の絵をかくのに1日以上かかってしまうのだった。
教訓 絵週記ならかけたのに
冬男
 ある時、ある所に、夏休みのとれない男がいた。彼は1年の半分を南半球で過ごし、もう半分を北半球で過ごすのだった。
教訓 Mr.Wintertime
有名人
 ある時、ある所に、有名人になりたい男がいた。才能が無いので、せめて化石になって残ろうと思い、条件のそろいそうなところで死んだ。5000年後、彼は化石で発見されたが、有名人にはなれなかった。名前がわからなかったのだ。
教訓 虎は死しても皮残し、人は死しても骨残す
人外魔境
 ある時、ある所に、探検家がいた。彼が「去年人外魔境を探検してきた」というと、彼の友人は「それはうそだ」と言うので、彼がなぜかと尋ねると、「人外魔境とは人のいない世界のこと。お前は人なんだから、そこに入った時点で人外魔境ではなくなってしまうのだ」
教訓 彼は人ではないのかもしれない
超独裁
 ある時、ある所に、大きいものが好きな独裁者がいた。彼はこの世のすべてのものを大きくしたが、満足することは決してなかった。すべてが大きくなれば、それが標準の大きさになってしまうからだ。
教訓 比較的大きいのは比較的小さくもありうる
初出「探書手帳26」(1998/08)

mugakudouji
「無意味草子」

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