宇宙、そこは最後のフロンティア
スタートレックのその人気の秘密のひとつに、明るい未来感のあるSFだったことをあげても、そう反対する人はおるまい。
宇宙に待ち受ける数々の困難を、前向きで高潔な宇宙艦隊士官が解決をしていく。
難民・テロ・宗教・内戦など、その問題はさまざまであるし、必ずしもハッピーエンドになるわけではない。
しかしながら、そこには必ず明るい希望が描かれているのだ。
翻って、今われわれの周りには、明るい未来を語る人はほとんどいない。
温暖化や高齢化、破綻した自治体、身近なところでは年金問題や食の安全問題など、暗い未来を暗示する問題には事欠かない有様だ。
だが、本当にそれでよいのか、と思う。
来る未来が必ず暗いなら、今のうちに自殺でもしてしまったほうが良い。
明るい未来を信じられないのなら、生きる楽しみなんてないじゃないか、と思う。
だから、私は明るい未来を信じるし、そのためには、宇宙艦隊士官のように、前向きに、高潔に、今目の前にある問題を片付けたいと思う。
麻生太郎『とてつもない日本』(新潮社)
麻生太郎外務大臣も、私と同じくポジティブな考えの持ち主のようだ。
彼は日本を評価するのに「美しい」なんていう言葉は使わない。
彼に言わせれば、われわれ日本人は「普通」であるのだ。
日本人が今日までやってきたことは普遍的で正しい。
だから、明日も今日と同じように正しいことをするのだ。
ところが、普通であるということが、世界では普通ではないのだ。
われわれが普通であることを、世界に売り込もう、という。
次の引用に、麻生大臣の全てのメッセージがこめられているといってよい。
柄にもなく、美辞を弄しすぎたかもしれない。日本人が過度に肩に力を入れる必要はない。明日からできることは、今日までやってきたことと、少しも違いがない。
それはすなわち、賢明に働くこと。知識や経験を分かち合うこと。成功と失敗の体験を共有するため、機会をとらえて対話を重ねていくこと。その中から、政治でも経済でも、ベストプラクティスを互いに学びあっていくこと?。これらがアジアを今日のアジアにしたのであれば、明日から私たちにできることも、これらと変わるところはないのである。
政治家は、ビジョンを示すことが大切だ。
この本は非常に平易な文章で書かれていて、明快で分かりやすい。
そういう意味で、このビジョンは首相が示したビジョンより、よくできている。
細かな点では多々異論もあるが、それでもこのユニークなビジョンを持った政治家に、この国を任せたら面白いのではないかと、素直に思えるものである。
首相公選制であったら、私も一票を投じたに違いない。
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