007 ロシアより愛をこめて

1963年(日本は1964年)公開の007シリーズ第2作。
日本初公開時の邦題は「007 危機一発」。
この邦題は誤字ではなく、髪の毛一本の僅差で生じる危機の「危機一髪」と、銃弾「一発」を掛けた物で、配給も音であったユナイトに所属していた水野晴郎が考案したという。
1972年のリバイバル上映から、原題の訳に近い現在の名前になった。

さて、お決まりについて触れておこう。

まず、オープニング前にアクションシーンが追加された。
とはいえ、これはジェームズ・ボンドがアクションをするわけではないので、まだ完全とは言えない。

敵については、はじめてスペクターが登場する。
前作の敵ドクター・ノオもこの一味で、本作中に顔が映らずに登場する「ナンバー1」はその首領エルンスト・スタヴロ・ブロフェルドである。ただし、この名前はまだ登場しない。長毛の猫を抱いている。後の作品ではスキンヘッド姿で登場し、失敗した部下を残虐な方法で処刑する。その人物像は他の映画の悪役像に大きな影響を与えている。
本作では「ナンバー1」と呼ばれ、他の映画作品でも固定されているが、原作のスペクターでは機密保持のために定期的に番号が変わる。また作品毎に演じる役者が変わるが、原作に従えば、機密保持のために整形手術を繰り返しているからである。

本作のメインの敵はローザ・クレッブである。
ソ連情報局の大佐だったが、スペクターの衣朕となった人物。
非情に不格好な眼鏡をかけた、冷酷非道な女ある。
オースティン・パワーズに出てくるフラウ・ファービッシナの元。

007シリーズの常道として大物の敵(本作ではローザ・クレップ)には忠実な部下が付く。
レッド・グラントはボンドに罠を仕掛ける実行犯で、オリエント急行内でのボンドとの私党など、特筆すべきアクションを行っている。
後に出てくるような怪物じみた悪人ではなく、まともな悪人というところが特徴で、堅実に演じたロバート・ショウは本作で名を上げ、主演級の俳優となってゆく。

秘密兵器と言える物はこの作品から登場する。
ブリーフ・ケースにはケースの底にAR-7用銃弾20発が隠してあり、また両サイドに隠しナイフ、ケース内部にソブリン金貨50枚が隠蔽してある。
また、改造した赤外線照準器付きアーマライトAR-7が入っている。
タルカム・パウダーの容器をセットすると、ケースを普通に開けた場合にガスが噴出する。つまみを水平に回しすのが、このケースの本当の開け方。
このブリーフ・ケースはMI6諜報員の標準装備と思われ、ボンドの応援にやってきた諜報員も持っていた。
ボンドの装備ではないが、グラントの持っている腕時計は竜頭を引くとワイヤーが出て来て、これで首を絞めて殺す。
ローザ・グレッブの靴には強力な毒を塗ったナイフが仕込まれている。キングスマンは007の敵の武器もパクったようだ。

ボンド・ガールは、前作につづいてボンドの恋人としてシルビア・トレンチが出てくる。全作品を通じて、複数の作品に出てくるボンドガールは彼女だけ。
メインのボンド・ガールはダニエラ・ビアンキ演じるタチアナ・ロマノヴァ。私見だが、現在に至る全作品の中で、最も美しいボンド・ガールなのではないだろうか。
彼女はソ連大使館勤務という事だが、女優本人はローマ生まれ。イタリア訛りが相当きついらしく、映画では吹き替えとなっている。本作での成功後ハリウッドで活動するが、一向に英語が上達しないためその後は不発に終わったようだ。

本作で特筆すべきはメインタイトル。
ティモシー・ダルトンまでのメインタイトルはほとんどがモーリス・ビンダーの担当だが、本作だけはロバート・ブラウンジョンが担当している。
前作のビンダーのメインタイトルは幾何学模様の印象的な物だったが、本作では踊る女性の体にキャストやスタッフのクレジットが投影されるエロチックな物となっている。
このエロチックさは、次回作以降のビンダーの作品にも踏襲されてゆく。

音楽では、マット・モンローの歌う同名の主題歌がヒットする。オープニングタイトルでは歌のないバージョンだが、エンディングで流される。
本作で初めて「ジェームズ・ボンドのテーマ」につづく主要な楽曲、「007(または007のテーマ)」が使われる。「魔法使いサリー」のエンディング曲の導入部分がそっくりで、影響を与えていると思われる。

さて、映画という物はほとんどの場合、続編が面白くない。
それは大抵の場合、第1作目で面白い要素を消化し尽くしてしまうからだ。
しかしこのシリーズの場合、原作となる小説が既に何作もある上、前作は小説の第一作ではなかった事、そして低予算であり面白さも爆発したと言うよりは中庸であった事が幸いしたように思う。
本作は前作のヒットにより多額の予算が付けられ、脚本や俳優、アクションなど全ての面で前作を凌駕している。
本作の成功が、007が長期にわたるシリーズになった最大の要因だろう。
それ故、オープニング・シーケンスなど、本作の特徴が後続作品に多く踏襲されてゆく。

本作の見どころは、ボンド・ガールの卓越した美しさと、独創的なアクションにある。
特にアクションではオリエント急行内でのグラントと007の死闘が見物。狭い客室での殺し合いは迫力満点。その後ヘリコプターから追撃されたり、ボートでのド派手な脱走など、全く飽きさせない。
派手で独創的なアクションは、このシリーズの大きな特徴となる。

☆☆☆☆★

個人的には、メインタイトルがエロい事、ボンド・ガールが超美人なこと。もうこれだけで何度も観る価値ありなんですわ。。。

画像引用元 映画.com

mugakudouji
007映画・音楽・TV評価付記事

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