無意味草子 その2

錬金術
 ある時、ある所に、王様がいた。お抱えの錬金術師が報告した。「陛下、ついに金を作ることに成功いたしました。」。王様は喜んで言った。「大儀であった。引続きどんどん作れ。」。金五グラム作るのに、銀十トン使うことを彼は知らない。
教訓 知らぬが仏

新杞憂

 ある時、ある所に、天地が崩れ落ちて、身の置きどころがなくなることを恐れている人がいた。ある人が彼に、「天は空気の積み重ねで、それの無い所は無く、地は土の積み重ねで、それのない所は無い。」と言ってなだめたが、次の瞬間人類は滅びた。
教訓 核は身を滅ぼす
まちがい
 ある時、ある所に、「無意味草子」という本を書いている男がいた。彼は本の中で、「人類は滅びた。」と書いた。ならば彼とその本の読者は何者か。それは「新人類」。
教訓 誤りはない
予知夢
 ある時、ある所に、予知夢を見る男がいた。彼は自分の自殺を予知した。”死”を恐れるあまり、気が狂って自殺した。
教訓 よけいなものは見るな
地獄
 ある時、ある所に、悪い男がいた。悪行を度々繰り返したために、死後地獄に落ちた。しかし、苦しむことはなかった。彼はマゾだった。
教訓 住めば都
宇宙人
 ある時、ある所に、宇宙を旅する男がいた。その星の住民と、出来る限り友好的に付きあっていたが、食べられてしまった。それがその星の”友好”の印だった。
教訓 前もって調べよ
初出「探書手帳12」(1997/03)

mugakudouji
「無意味草子」

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