無意味草子 その3

最大の幸福
 ある時、ある所に、運の良い男がいた。108人目で願いの叶うという鐘を、108人目につくことが出来た。「一生幸せに暮せますように。」そう願った途端男は死んでしまった。
教訓 期待している時が一番幸せ
悪魔のささやき
 ある時、ある所に、小男にそっとささやく悪魔がいた。だが、何も起らなかった。さすがの悪魔も小男が聾者とは知らなかった。
教訓 知らぬが仏
人間不信
 ある時、ある所に、人間不信の女がいた。「何も信じられない。」と言っていたが、自分が人間不信だという事実は信じられた。
教訓 嘘八百
利己主義
 ある時、ある所に、自称利己主義者がいた。儲かるからと言って敵に武器を売りつけたら、その武器で自分が殺された。結局の所、彼は本当の利己主義者とは言えなかった。
教訓 本当の利己主義は身を助ける
大名医
 ある時、ある所に、どんな病気でも治す医者がいた。しかし彼は三人に一人しか診療しないのだった。彼いわく「病気が無くなったら俺の食い扶持はどうなるんだ」。
教訓 大は小を兼ねず
創造
 ある時、ある所に、神がいた。彼いわく「私が創造主なら私を作ったのは誰だ」。
教訓 とりあえずお母さんといっておこうか
初出「探書手帳13」(1997/05)

mugakudouji
「無意味草子」

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