百日紅 〜Miss HOKUSAI〜

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0417.jpg2015年の映画。

杉浦日向子氏の漫画のファンであった私は、封切りと同時に見た。

この映画を観た人の多くは非常に淡泊な印象を受けたようだ。あるいは、ロックは江戸モノに合わないとか、専業の声優でないことなどの批判とか。

しかし原作のファンである私から見れば、原監督はとても原作を大切にしているという印象を受ける。

杉浦氏の江戸感は現代的であった。だから彼女の描く江戸は考証に正確でありながら懐古趣味的なものでは無く、現代とリンクしていた。そういう意味で、音楽に彼女が大好きで現代的なロックが使われているのは、僕にはとても自然のことと思えた。

声優ではなく俳優が使われたのも、こなれた感じではないぶっきらぼうさが出ていて、原作の主人公たちのイメージに合っている。

この原作は非常に短い話の集まりで、各話もあまり起伏がなく淡々としている。どちらかと言えば画と演出で魅せている作品であって、2時間の映画にするのに向いているとは言えない。というか、杉浦作品は全般的に向かない。
この映画が淡泊な印象なのは、杉浦作品のエッセンスをそのままアニメ化したからだろう。

そんな中で、原作で一度しか出なかった盲目の四女の話を背骨に、2時間の映画にした原監督の手腕は凄いと思った。

原作にないシーンがいくつかあるのだが、その中で四女が少年と雪遊びをする場面が印象的だ。途中にこの場面があるからこそ、最後がきちんとする。オリジナルのシーンをはめ込むことで、原作通りの部分を際立たせている。

圧巻は、最後の方にあるお栄が走るシーン。原作では多分一コマか二コマだったと思うが、30秒以上のカットである。お栄が走りながら、背景がどんどん動き、カメラワークも背後から正面に回って足元から全身になる。恐らく全部手書き。
このシーンがあるからこそ、このアニメーションには原作とは違う価値があるのだなと思った。

☆☆☆☆☆

この作品を見て、杉浦作品をアニメ化するのは難しいことなのだと思った。
前述の通り淡泊だし、そもそも杉浦氏の画をそのまま起こしても動かないだろう。
だからこの作品のキャラクターデザインは杉浦氏の画とは別物なのだ。

2019/12/12追記

この作品、実は公開当初は僕の中での評価は高くなかった。
これにはいくつか理由があって、その最大なのは意外にも劇場とテレビの違いという点。
劇場で観た時の印象は画面が明るすぎる上、音が大きかった。
ところがBlu-rayを買って、家の大きくないテレビとしょぼい音響環境で見ると、その点が気にならなくなった。
それどころか、例えば北斎とお猶が会うシーンなど、まさしく杉浦日向子氏が漫画で表現した物に見えた。
映画館とテレビを比較して、大画面の方が良いと思うことは当然あったのだけれど、静かに家のテレビで見る方が良く感じたというのは初めてだった。

もう一つは、劇場とBlu-rayで複数回観たこと。
劇場で最初観た時は前述の画面の明るさと音響のうるささがあった上、衣装の件などの考証の間違いにどうしても目が行ってしまって減点幅が大きかったのだが、その後何度か見るうち細かな表現、例えばお栄が走るシーンやお猶が少年と雪で遊ぶシーンなどの監督ら制作陣の工夫に感心して、細かな考証の誤りが気にならなくなった。

僕にとって、初回の印象とそれ以降に見た印象がこれだけ変わってしまった作品も珍しい。

画像引用元 映画.com