多角的なものの見方

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多角的、多面的なものの見方というのは、努力してもなかなか得られるものではない。
日常接しているマスコミ(新聞、テレビなど)で報道される事件や事故は、世間の注目を集める大きなものは例外として、複数のメディアを比較しても、情報ソースが同じ(記者クラブや、警察発表など)ことが多いため、内容としては似たり寄ったりになる。また、視聴率などが取れそうな切り口でどこかが報道すると、他社は追従する傾向がある。

尼崎の列車脱線事件(あえて事故とは表現しない)の報道でも、各社は切り口としては「JR西日本のあきれた体質」という点で一致しているように思える。
確かに、JR西日本はあきれた体質の会社であるかもしれない。だが、鵜呑みにせずに、頭の中には常に疑いを持って、その報道を見ていたほうが良いと思う。

インタビューに答えている人はどういう立場の人か
対立する、反対の立場の人への取材は反映されているか
事件などの構図が、あまりにも単純化されすぎていないか
きちんと検証されているか、あるいは傍証があるか

たとえば、インタビューに出てきたJR西日本の運転士や車掌は何者なのだろうか。彼らは何を目的に、JR西日本のあきれた体質を世間に知らせているのだろうか。また、彼らの言っている事が本当であるか、検証している報道はあるのだろうか。

疑問に思ったので調べてみると、彼らのうち顔を出していた運転士数人は労働組合のメンバーであった。JR西日本の労働組合は大きく分けて3つあるが、彼らの所属するものはそのうちで最も小さく、系譜としては分割民営化以前より過激な労働運動で知られており、かつ現在JR西日本から切り崩し攻撃にあっているところであるそうだ。(3つの労働組合のHPを見比べれば、どこが最も会社と敵対しているかは一目瞭然だ)

また、記者会見でのJR側のコメントは、ニュースでの編集で真意を歪められていないだろうか。以前、石原都知事のコメントを、まったく逆の意味に歪めた放送を行い、告訴された放送局もあった。

多面的といえば、ほかにもいろいろと提供すべき情報や、今後長きに渡っての続報があるだろう。私が今関心があるのは下記のとおりだ。
経済的な影響はどうなっているのだろうか。ワイドショーで紹介されたこともあって、日本スピンドル製造の株価は上がっていた。
ATS-SWをATS-Pに付け替える工事が、今後各地で進むと思われるが、それらの機器を製造しているのはどこだろうか。また、その際に車輌を新型に更新しなければならない場合もあるとすれば、車輌製造メーカーはどこなのだろうか。

今回の事件はマンションに突っ込んだわけだが、同じような条件の物件は、価格の下落はないのだろうか。
また、尼崎の現地にマンションを立てた業者は、あの場所の安全性について少しの疑念もなかったのだろうか。

JR西日本は酷い会社の烙印を押されたわけだが、ほかの旧国鉄系の各社や、第三セクターは大丈夫なのだろうか。特に第三セクターは、国鉄やJRが投げ出すほど収益の上がらない路線を貧乏会社が運営している形である。高度な安全設備が導入されているとは思えない。
また、高度な安全設備が義務付けられれば、国庫からの補助があったとしても、その導入費用や維持費用をまかないきれずに、撤退せざるを得ない路線も出てくるのではないだろうか。

鉄道の制限速度はだれがどう決めるのだろうか。聞けば現場の線路は東西線開通の際に付け替えられたというが、その際ほとんど直線だった上り線は時速60キロだったと言うし、現行120キロの直前の直線は2年前のダイヤ改正の前まで100キロ制限だったという。制限速度というのはそう簡単に変えられるのか。

鉄道・航空事故調査委員会は、権限や予算、人員は現状のままで十分なのか。そもそも彼らはどういう活動をしているのか。(まぁ、活動についてはHPを丹念に見て、事故調査報告書もいくつか見たので大まかにはわかるが)

JR西日本の経営陣に、株主代表訴訟の準備が行われているそうだが、原告は株主としての立場以外に、どういう意図があるのか。
また、JR西日本の今回の損害額はいくらで、保険はどの程度おりるのか。

色々と興味は尽きない、いやな野次馬である。

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